ついにやってきたペップvsモウリーニョのマンチェスターダービー。 先日、ペップ×シティの記事(ペップ戦術の浸透具合とハイプレスで躍動するストーク 〜マンチェスターシティvsストーク〜)では早速ペップらしさを見せていたことを、モウ×ユナイテッドの記事(モウリーニョが描くユナイテッドの未来、そしてUAE戦の日本代表と決定的な差を見せる2選手 〜マンチェスターユナイテッドvsハルシティ〜)では予想に反して、ハイプレスも撤退守備もポゼッションでも、なんでもできるチームを目指しているのかもしれないことを書いた。

ペップのポゼッション重視のチームに対して、やられたら仕方ないぐらいの勢いで猛烈なハイプレスをかけていく戦術がある程度有効なのは過去に色んなチームが示している。しかし前節時点のユナイテッドのハイプレスはかなり怪しくて微妙なものだったが果たしてどうなるのか。

試合が進んでいく中で、2人の世界的名将は非常に面白い選択をしていくのであった。

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 目次 1.プロローグ:ついにプレミアで因縁の対決 2.ペップらしいポゼッションで余裕のボール運び 3.「モウよ、攻撃も思い通りにさせないよ」のシティ’s ハイプレス 4.「ペップよ、お前には意地でも負けねえ!」次は俺らのハイプレスだ! 5.余談

 1.プロローグ:ついにプレミアで因縁の対決
マンチェスター・ユナイテッドのスタメンは、デヘア、ルークショー、ブリント、バイイー、バレンシア、リンガード、ポグバ、フェライニ、ムヒタリアン、ルーニー、イブラヒモビッチ。 前節からマーシャル→リンガード、マタ→ムヒタリアン、とスタメンを変更してきた。マタは良いプレーをしていたが、ペップのチーム相手だとポゼッションサッカーではなくなると読んでの変更だろうか。

シティのスタメンは、ブラボ、コラロフ、オタメンディ、ストーンズ、サーニャ、フェルナンジーニョ、シルバ、デブライネ、ノリート、イヘアナチョ、スターリング。 バルセロナからビルドアップ能力に優れたブラボを獲得し、早速スタメンに起用される。あとはSBのスタメンが誰になるか読めなかったが、サーニャとコラロフとなった。そして出場停止のアグエロに代わり19歳のイヘアナチョが大一番でスタメンとなった。

 2.ペップらしいポゼッションで余裕のボール運び

シティの攻撃フォーメーションは4-1-2-3。対して、前半のユナイテッドの守備フォーメーションは4-4-2。序盤、イブラとルーニーの2トップは前線から激しくプレッシャーをかけていくのではなく、イブラが片方のCB(主にジョーンズ)、ルーニーがアンカー(主にフェルナンジーニョ)についていることが多かった。下図参照。

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つまりビルドアップで怖いジョーンズとフェルナンジーニョにはまずボールを持たせず、オタメンディにボールを持たせることを意識していた。ただしイブラは守備に熱心だったかというとそんなことはなかったが。

さて舐められたオタメンディ。すると怒りのビルドアップを見せていく。例えば開始早々にはドフリーで駆け上がり、裏に抜けるデブライネにグラウンダーをキレイに通してチャンスメイク。そんなドリブルで駆け上がる場面が続出していくため、ルーニーが徐々に寄っていくことでなんとかパスコースを消したがっていたが、消しきれるはずがなかった。

さらにCBの2人とアンカーが、ポジションチェンジをしたり、3バックのような形にしたりで、イブラとルーニーの守備を牽制していく。例えば、フェルナンジーニョがCBの位置に、ストーンズがアンカーの位置にポジショニングするなどの場面が頻発していた。 また困ったらビルドアップ能力を評価されてペップが獲得したブラボが助ける。ブラボ自身がプレッシャーを受けたり、パスの受け手の近くにユナイテッドの選手がいても平然とパスを通してしまっており、ビルドアップに非常に貢献していた。 そしてブラボをいれても困ったら、左SBのコラロフによる必殺ロングフィードで、デブライネやスターリングに直接ボールを届ける手段も装備していた。ちなみに1点目もこの必殺ロングフィードから、イヘアナチョの落としにスペース大好きデブライネがGKの逆をつく見事なシュートを決めた。

つまり、何段階にもビルドアップの手段を準備しておくことで、ハイプレスが浸透しきっていないユナイテッドに対して余裕でボールを運ぶことができており、やりたい放題回されるユナイテッド。

そしてビルドアップが成功して崩していく段階に入っていく。シルバやデブライネはSHとボランチの間のライン間でボールを受けたり、SBとCBに侵入していくことで、自身がいるサイドのSHとSBとともに崩しにかかっていた。 ただしやはりストーク戦と同様、シルバは左寄りで上下に動く、デブライネは下がるよりも高めの位置で左右に動く傾向が強かった。シルバの各所でのリンク役具合は素晴らしく、シティのゲームを作っているのはシルバと言っていいだろう。

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さらに上図のとおり、シルバとデブライネがそのようにサイド寄りに動いていくと、この2人を自由にさせることだけはやってはいけない!とポグバとフェライニはついていくことが多かった。すると、片方が動くだけでもバイタルにスペースができるので、イヘアナチョのプレースペースを創出することに成功する。もしポグバとフェライニがついてこなかったらそのままフリーのシルバかデブライネに渡せばいいよね、という算段だろう。 このようにサイドと中央で、効果的な場所を選択し、最後は特に左サイドをコンビネーションで崩して低めの早いクロスで、ゴールに迫っていくことが多かったように思う。

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そんなこんなでサイドチェンジや、サイドを深くえぐるシティの攻撃により守備ブロックを下げさせられるユナイテッド。すると上図のとおりシュートやセンタリングで跳ね返ったところに、ユナイテッドの選手が少ないという現象が起きる。これによりフェルナンジーニョがセカンドボールを拾いまくることで、シティの2次3次攻撃へと繋がっていく。

ただしそれでもユナイテッドは、何度か高い位置でボールを奪えば、イブラ、ルーニー、リンガード、ムヒタリアンなどが一気に押し寄せてくるショートカウンターは迫力があるものだった。やはりユナイテッドのショートカウンターは怖い。

そしてこのままやられっぱなしではやばい、と前半28分あたりからハイプレスをかけ始めようとするユナイテッド。しかしハーフタイムを挟んだわけでもなく、試合中の急な変更だったので、ハイプレス体制をしっかり整備・共有できていなかったのだろう。ちゃんと人についていけてない場面が多々見られ、普通にビルドアップを許していた。 2点目もそんなビルドアップからだったが、これはデブライネのフェイントがうまかった。イヘアナチョは見事なまでのごっつぁんゴールだった。

 3.「モウよ、攻撃も思い通りにさせないよ」のシティ’s ハイプレス
前半のユナイテッドの攻撃時のフォーメーションは4-4-2。これに対して、シティの撤退時の守備フォーメーションは4-1-4-1だが、まずはゾーン3、つまり前線からプレッシャーをかけていくことでユナイテッドのビルドアップ破壊を試みる。ハイプレス時のシティは4-4-2っぽくなっており、システムの噛み合わせ的にミスマッチが起きないようにしていた。 具体的にはCBにはイヘアナチョと、デブライネが前に出ていくことが多かった。降りていくポグバとフェライニにはシルバとフェルナンジーニョがついていくことが多かった。そしてSBにボールが出たらSHが激しくプレッシングする。 またムヒタリアンが降りてこようものならコラロフがセンターラインを越えてもついていくなど、しっかり人についていくことで、ユナイテッドのビルドアップは困難なものとなっていた。そしてボール奪取し、ショートカウンターでゴールを狙うことを第一としていた。

これに対してSHのリンガードとムヒタリアンはシティの激しいプレスや挟み込みの前に、かなりボールロストが目立ってしまっていた。あまり長い時間は試合に出てなかった2人だと思うので、いきなりこの大一番で使われて緊張もあったのかもしれない。しかしそれを考慮しても少し辛い出来だった。

神出鬼没のフェルナンジーニョを始め、シルバも体は小さくても賢いポジショニングで何度もボール奪取を成功させていて素晴らしかった。これによりユナイテッドの前半のポゼッション率は非常に低い展開となったが、それでもイブラを使ったり、アンカーの横のエリアにルーニーが嫌らしくポジショニングをとることで、なんとか攻めていこうという意思は見られた。ちなみにムヒタリアンもアンカー横エリアでのポジショニングを意識している様子は見られた。 manc_manu9

ただし繰り返されるシティのボール奪取が、ユナイテッドのSBを高い位置に上がりづらくさせており、攻撃の厚みもあまりなく、セットオフェンスであまり効果的な攻めはできていなかった。

しかし何度もボール奪取を成功させていたシルバが、強行突破を図ったバレンシアへのファールでイエローカードを出される。するとそのFKからブラボがハイボールをロストしてイブラに点を許すという、シルバにとって悲しい展開が待っていた。

 4.「ペップよ、お前には意地でも負けねえ!」次は俺らのハイプレスだ!
ハーフタイムを挟み、モウリーニョはパフォーマンスの悪かったムヒタリアンとリンガードをあっさり下げ、エレーラと18歳のラッシュフォードくんを投入する。この采配には、攻守両面でモウリーニョの狙いが隠されていたが、それについては後ほど書いていく。
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これによりシティのセットオフェンス時、ユナイテッドの守備フォーメーションは4-1-4-1に変化する。エレーラがアンカーとなり、ラッシュフォードくんが左SH、右SHにルーニー。 エレーラは、ライン間を動いたり、SBとCBの間に侵入していくシルバに執拗についていっていた。ただしシルバがかなり離れた位置に移動する時はマークを味方に受け渡す。ラッシュフォードくんは投入早々、相手との間に体を入れてそのままターンして前を向くことで幾度かチャンスを作っていた。

ではハーフタイムの選手交代采配によるモウリーニョの守備面での狙いについてだ。それはハイプレスでシティのビルドアップを破壊することにあった。 前半の終わり頃とは異なり、整備されたユナイテッドのハイプレスにビルドアップでドタバタしてしまうシティ。仕方なくCBやGKがロングフィードが蹴る。しかし競り合いで強い選手が前線にいるわけではないシティ。ユナイテッドがボールを奪取できることが多く、そこからのカウンターは強烈だった。 ただしシティもやられっぱなしでいるわけではなく、なんとかそこからプレスをかけられる時はかける。そしてラッシュフォードくんのところでボール奪取することが何度も見られた。

次にハーフタイムの選手交代采配によるモウリーニョの攻撃時の狙いだ。それを考えるために、まずシステムとその噛み合わせがどうなったのかを見てみよう。 manc_manu4

上図の通り、ミスマッチが起きてエレーラがフリーになってしまう現象が起きていた。デブライネがエレーラにつけばCBの片方が空いてしまう。そして前線にはイブラ(195cm)、フェライニ(195cm)、ポグバ(191cm)という巨人軍団が待ち構えるという恐ろしい事態が起きている。 よって、フリーでボールを持てるCBかエレーラから前線にロングフィードを許してしまい、巨人達とのハイボール合戦に突入せざるを得ない展開になったシティ。 しかもシティのハイプレスする選手たちが後方に戻るには距離があるため、ユナイテッドの前線は時間とスペースも得られており、特にフェライニが後方からのフィードの的になって難なくポストプレーをこなしていた。そのこぼれ球をイブラが狙うという構図が終了まで繰り返し見られた。

またロングフィードだけでなく、下図のようにサイドでバレンシアが持った時に、ノリートとシルバが挟み込みにいくと、フェライニはタイミング良くサイドに寄り、ワンタッチでルーニーにパスを通してチャンスメイクする場面も何度か見られた。 manc_manu5
そんな感じで今日もこの2人の器用さが攻撃を活性化させていく。ルーニーがサイドにいる代わりにポグバが前線に侵入していっていた。

そこでペップはイヘアナチョに変えてフェルナンドを投入。おそらくユナイテッドが前線にイブラ、フェライニ、ポグバというハイボールに強い連中をぶっこんできたので、その対策だろう。 シティのフォーメーションは、4-1-4-1で変わらないが、フェルナンドがアンカーで、フェルナンジーニョが1列前へ、スターリングがトップとなる。その後スターリングも下げてサネを投入すると、デブライネがCFで、右SHにサネとなる。

そしてこの交代によって、落ち着いてビルドアップしてもハイプレスを受けてしまうシティは、ボールを拾ったら、主にシルバから早々に前にボールを供給して速攻で攻め込むモードに切り替える。デブライネはスペース大好物だし、ビルドアップが苦しい現状は一応理にかなっている。 で、そんなデブライネはCKから繰り返し素晴らしいボールを供給したり、カウンターの場面ではポストに当てるシュート、相手を引きつけてのシルバへのラストパスなど、ユナイテッドにとって破壊力抜群だった。 実際ユナイテッドの巨人達による猛攻よりも、デブライネ軍団の方が、ポストに当たった場面など決定機を作っていたほどだった。従ってモウリーニョの選択が正しかったどうかは悩ましいところだが、前半のままやられっぱなしであるよりは勝機があっただろう。

それなら俺も!とボール奪取の的にされていたラッシュフォードくん。悔しさはゴール前で晴らそうと。超快速で相手陣内に侵入し、シュートが決まったかと思いきや、イブラがオフサイドになってしまいノーゴール判定。悔しむラッシュフォードくん。

そして最後にデブライネに代わりサパレタまで投入したシティ。もはや6バックなのか何バックなのかわからないスクランブルアタック対策で、なんとか守りきったシティが2-1で勝利。

終了後すぐにシティの守備陣が集まり、肩を組んで「ふうぅぅ、なんとか守りきったあ」という感じで、飛び跳ねて大喜びするのではなくめちゃめちゃホッとした光景は、終盤のユナイテッドの攻撃が脅威的であったことを物語っていた。

そして観客席にいるファーガソンが顔を横に振って悲しんでいる姿が映し出されたのも印象的だった。

 5.余談 とっても面白い試合だった。采配も面白かったし、イブラにぶつかってきたシティの選手が倒れていく様はすごかった。前半から守備面でも躍動しまくってたフェルナンジーニョが終盤のカウンターで駆け上がっていき、しかも華麗に相手をかわしてシュートする様にはさすがの一言。 またこんな大一番の試合で、18歳のラッシュフォードくん、19歳のイヘアナチョが普通に起用されて、それなりに活躍してしまうというのもすごいことだ。

さてこの試合はシティの勝利で終わったが、まだ開幕して4節目。特にユナイテッドは、前節の怪しさ満点だったハイプレス、そしてこの試合も前半途中からハイプレスし始めたものの後半にモウリーニョが整理してようやく機能し始めたことからもわかる通り、まだチームに戦術が浸透しきってないと思われる。 次の対戦までには時間があるので、その時までには色々戦術等々含めて両チームとも整備されているのではないかと思うので、次回の対戦が楽しみでならない。



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