タイ戦では、UAE戦分析記事(UAE戦、なぜ中央渋滞が発生し、なぜ香川真司は空気だったか図を用いて解説 〜日本代表vsUAE〜)で指摘した幅と深さの問題について解決したい意図は見えた。しかしなぜタイ程度の相手に大量得点できない展開となってしまったのだろうか。それをタイの守備陣形、スペースの活用、ボランチの攻撃性能という面から見ていく。

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 目次 1.プロローグ:カウンター対策、突破力、裏抜けを補充する日本 2.タイの日本対策ディフェンス 〜SHの中央警戒ポジショニング〜 3.左サイドをいかに崩していくか 〜ポッカリ空いたスペース〜 4.なぜタイ程度に大量得点できないか 〜物足りないボランチの攻撃性能〜 5.余談

 1.プロローグ:カウンター対策、突破力、裏抜けを補充する日本 日本代表のスタメンは、西川周作、酒井高徳、吉田麻也、森重真人、酒井宏樹、長谷部誠、山口蛍、原口元気、香川真司、本田圭佑、浅野琢磨。 UAE戦からは大島→山口、清武→原口、岡崎→浅野。日本のポゼッション率が高くなる展開だろうから、ネガティブトランジション時のカウンター対策として山口起用は合理的。ただし攻撃に関してこの2人にそこまで期待するわけにはいかないので、前線4人とSB2人の6人でなんとかしてね、という感じだろうか。

タイ代表のスタメンは、上記画像をご参照ください。ティーラシンはタイのメッシと呼ばれてるらしい。

 2.タイの日本対策ディフェンス 〜SHの中央警戒ポジショニング〜

タイの守備フォーメーションは4-4-2。タイは前線からプレッシャーをかけてくることはなく、UAEと同様にCBにフリーでボールを持たせて、FWは中央(日本のボランチ)へのパスコースを消すことを意識していた。

また香川に対しては強く警戒していた。ライン間を動く香川に対して、ボランチのどちらかがマンマーク気味につくことでライン間で受けさせないようにしていた。

そしてタイの守備の重要な特徴として、前半日本がサイドでボールを持った際、下図のようにタイのSHが通常よりも中央へのパスコースを消すために、中寄りにポジショニングをとってきていた。 japan_thai2

おそらくだが、日本のSHが中に入ってライン間で受けるポジショニングをとるとスカウティングしていたと思われるタイ。そのため、ライン間に縦パスは通させないぞ、という対策だったのだと思われる。 ただし日本のSHは前半、タッチライン際にポジショニングをとることが多かった。元々タイの対策を予測していたのか、選手が自主的に選択したのか、単にUAE戦で幅をとれていなかったからなのか、理由は現場の人間にしかわからない。

ちなみにサイドで日本がボールを持った際だが、タイの10番より18番の方が守備への意識が高く、日本が右サイドでボールを持った時に、タイはSB、SH、FWの3人が揃っていることが割とあった。従って左サイドから攻めていくことが自然と増えていく日本。

 3.左サイドをいかに崩していくか 〜ポッカリ空いたスペース〜 で、左サイドから攻め始める日本。タッチライン際にいる原口に対して、タイのSBがマンマーク気味についてきていた。そこで原口はボールを受ける時にタッチライン際で下がってボールを受けようとする。するとここにもついてくるタイのSB。従って、下図のようなスペースができていた。 japan_thai3

となれば、このスペースを活かしていきたい日本。

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であれば当然上図のように、浅野や香川やボランチ(左側の長谷部)が侵入していくことで攻略していきたいところだ。ちなみに本田がゴール前でドフリーを外した場面は浅野がこのスペースに侵入してタイのCBを1人サイドにつり出した形からだった。

また香川も侵入していくが、そのスペースへ動く時にもタイのボランチがついてきたため、やりづらい香川。それでも何度かはフリー気味に侵入していったのだが、そんな時に限って欲しいボールが来なくて切ない香川その1。下の写真はその2例だ。 kagawa_sakaigo香川は早めのグラウンダーをもらって前を向きたかったが、酒井高からは微妙な浮き球が来てしまい、タイの守備陣が挟み込む時間ができてしまう。 kagawa_haraguchi kagawa_haraguchi2これも原口からは緩いボールが来てしまい、前を向けずにタイの守備陣が挟み込む時間ができてしまう。ただしこの場面は臨機応変に対応し、逆に敵を引きつけたタイミングでゴール前に侵入していく原口にリターンパスをなんとか返してチャンスにできていた。

 4.なぜタイ程度に大量得点できないか 〜物足りないボランチの攻撃性能〜 ただしSBの裏のスペースへは、浅野や香川がそこそこ侵入していく、逆サイドだと山口蛍がたまに侵入する程度で、決して回数的に多いとは言えなかった。特に長谷部が侵入していくことはほぼなかったと思う。UAE戦に続き、やはりスペースへの意識が欠如している長谷部。
従って、日本のSHとSBの2人でなんとか崩してね、となってしまうことが多くなってしまった。原口に突破力があるので、ある程度は崩せるが、もう1歩深い崩しが物足りずな印象を受ける日本。このタイ戦に限らず、ボランチ(特に長谷部)がSBの裏やSBとCBの間に侵入していく回数が増えれば、日本の攻撃力は飛躍的に高まるだろう。ただし今のところそんな気配は見られない。

あと、左サイドでボールを保持する時によく起こっていた現象としては下図のパターンがある。 japan_thai5

UAE戦にも似た状況があったが、このスペースを活かす意識がボランチの2人に欠如していた。

また下図のように酒井宏樹のところにも広大なスペースがある場面が多々見られる。 japan_thai6

左サイドから右サイドにサイドチェンジし、酒井宏樹が右サイドを深くえぐれば、幅だけでなくタイのDFラインが下がって深さもさらに獲得できる。当然得点チャンスも増えていくだろう。しかし1点目こそ山口から酒井宏のクロスで原口の得点となったが、まだこのサイドを使う意識が少し足りない上に、出し手と酒井宏の飛び出すタイミングが合わずに効果的なサイド攻撃にできていない場面も多々見られた。ちなみに酒井宏はハリルに怒られそうだ。

このようにサイドにスペースもある上に、1点目の守備の対応からも、サイドからの守備にタイの弱点があることが明確になっていた。にもかかわらず、空いたサイドを使わずに無理な縦パスで失う長谷部が見られたり、フリーでボールを持った山口の体の向きが悪く、左サイドを見れずに無理にスペースのないところに縦パスしてしまってボールを失う場面が見られた。つまり次の攻める展開への判断が悪い。

サイドがタイの弱点とわかったのだから、まずはサイドを徹底的に攻めてボコボコに殴りまくる。そしてタイが「これじゃマズい」と思ってサイドを警戒し始めたら、逆にスペースができる中央に縦パスを通していけばいい。特に長谷部と山口は縦パスの精度が高いわけじゃないのだから。そういった身の丈に合ったゲームコントロールをしなければいけない。

とは言うものの、原口が中に入ってこないことで守備の狙いが外れてそこそこサイドからやられてしまったタイは、後半からサイドも警戒する守備に切り替えてきた。具体的にはSHが中に寄らないポジショニングをするようになった。これによりライン間でスペースができるようになるはずだが、そもそもトランジションの応酬で早いカウンター合戦気味になってしまい、持ち味を発揮する展開にならなかった切ない香川その2。

もっと早く、例えば前半半ばの段階で、タイをサイド警戒守備陣形へ切り替えさせることができれば、中央で香川や本田が活き始め、中央かサイドかどっちつかずになったタイに対して、状況に応じてサイドからも中央からもボコボコにして大量得点、という展開に持っていけたのではないかと思う。したたかでなければいけないよ、と。

 5.余談 幅や深さもまだ効果的に改善していきたいが、UAE戦よりは解決しようとする意図は見えた。ただし攻撃の厚みやゲームコントロール面で物足りない印象を受けた。やはりボランチ2人のうち少なくとも1人は攻撃性能の高い人材を起用したいと感じる。ぶっちゃけた話、長谷部はもっと変わらないと2年後には必要なくなるかもしれない。でもキャプテンなので外しづらそう。ハリルの決断やいかに。

またタイのカウンターは微妙だったが、特にアジア相手の場合、攻撃に人数を割く日本には、少ない人数でも敵のカウンターを安定感持って塞き止められる強力なCBが欲しいところだ。

原口くんは攻守に頑張ってた。あとUAE戦の分析記事でSBにもっとゴール前に侵入してほしいと書いていたが、タイ戦ではその願望が少しだけ叶った。少しだけだけど。



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