試合後、選手はリズムがつくれなかった、と言う。具体的にはどういうことなのだろうか。 日本もUAEも中央に渋滞するかのごとく選手が密集し、ごちゃごちゃしてしまっていた。そして香川真司はなかなか活躍できなかった。なぜこのようなことが起こってしまったのか。

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 目次 1.プロローグ:抜擢された大島僚太、準備万端のUAE 2.UAEのファーサイドを狙え 3.なぜ中央渋滞が起こってしまったのか 4.なぜ香川は空気になってしまったのか 5.カウンターにしてやられるジャパン 6.余談
 1.プロローグ:抜擢された大島僚太、準備万端のUAE 日本代表のスタメンは、西川周作、酒井高徳、吉田麻也、森重真人、酒井宏樹、長谷部誠、大島僚太、清武弘嗣、香川真司、本田圭佑、岡崎慎司。 抜擢された大島僚太。川崎の10番に期待がかかる。また帰国が最も遅かった清武もスタメンとなった。そして今のところ今シーズンミランで出場数が減ることになりそうな本田がどうなるかと思ったがスタメン。

UAE代表のスタメンは、エイサ、サンクール、アハメド、ガリブ、サレム、イスマイル、アメル、ハミス、オマル、ハリル、アリ。 注目のオマルは髪型がアフロで特徴的なのでわかりやすくて助かる。なんと2ヶ月間合宿をして準備してきたらしいので、スカウティングだけでなく、それを基にしたトレーニングも日本とは比較にならないほど積んでいることが予想される。

 2.UAEのファーサイドを狙え

日本のビルドアップはCBとボランチの4枚ボックスで行うことが多かった。ボランチの2人は相手の2トップ間や2トップ脇に位置することでUAEのFWをけん制する。そしてパスを出せる大島や森重から中央のライン間にいる香川や相手SHとボランチの間に移動している清武本田に縦パスを狙う、それが無理ならSBに出す。


ではまずビルドアップ隊からSBにボールが出るパターンだ。SBがボールを持つと、右サイドなら本田が、左サイドなら清武が中に入ってライン間で受けようとしていた位置から、SBとCBの裏抜けを狙う動きをしていた。先日のセビージャ戦分析記事にも書いたが、清武にとってはセビージャでほぼ同じ行動をしているので違和感がないだろう。そしてそこにパスを出せなければ、岡崎や逆サイドのSHがダイアゴナルランでゴール前に侵入してくるところにアーリークロスを狙う場面が見られた。酒井高からのアーリークロスに本田がヘディングで合わせて惜しかった場面がその最たる場面だろう。

ファーサイドを狙うことが多かったのはスカウティングを基にしているからだろう。そして清武のFKからファーサイドでフリーだった本田が渾身のヘディングシュートで先制点。本田をマークしてた選手がボールに届かないと見るや本田のマークを放棄してボールウォッチャーになってくれていた。またそのあとも清武が左サイドからファーにアーリークロスし、本田がフリーで折り返した場面も惜しく、明らかにファーサイドへのクロスが有効だった。また清武が浮き球をトラップした直後に一瞬で前を見て、すぐに岡崎が狙っていた裏へ絶妙なパスを送ったのも見事だった。
清武は試合開始直後、少し硬くなっていたのか立て続けに2回ミスしたが、その後は慣れたのか安定感が出てきたようだった。セビージャでもよく体を入れてボールキープするが、UAE相手には余裕そうだった。まあレアルやバルサ相手に平然とこなしてたのだから当然といえば当然。

 3.中央渋滞はなぜ起こってしまったのか 次にビルドアップ隊から中央に縦パスを入れるパターン。香川清武本田に縦パスが入れば、コンビネーションプレーで崩していきたいという意図が強く見られた。

しかし、なぜ中央渋滞が起こってしまい、うまくいかなかったのか。

まずそもそも前提の話だが、左サイドに右利きの清武、右サイドに左利きの本田を置く時点で、スピードのあるわけではない彼らは、ある程度中に入っていくことが仕様である。メディアで色んな解説の方がこの2人が中に入ったからダメだったと発言しているがそうではない。中に入ること自体は悪いことでも何でもないのだ。 ただしその場合には別の誰かが横幅をとる必要がある。SHが横幅をとらない場合は、SBが横幅を担うというのがよくあるパターンだ。たまにサイドに流れるボランチが横幅をとることもある。(あるいはFWがサイドに流れてもいいが、ハリルは岡崎に今回あまりそういうプレーをさせなかったのではないかと思う。)

ちなみにあくまで参考までにだが、先日記事にもしたセビージャもセットオフェンス時は必ずSHの選手が中に入り、2-1-5-2のフォーメーションとなるが、中央渋滞は発生しない。基本的にSBが高い位置で横幅をとるし、アンカーやFWがサイドに流れることもある。(裏抜けで深さもとる)。このことからもSHが中に入ること自体は問題ではないとわかる。

で、話は戻って。私は試合開始前に「SBがダイアゴナルランでゴール前に急襲するパターンを期待したい」という旨のtweetをしたのだが、SHがタッチライン際で横幅をとり、SBの酒井コンビがインナーラップで裏抜けを狙っていくパターンも欲しかった。しかし酒井コンビがそんな動きをする機会は非常に少なかった。従ってSHである本田と清武が中へ入っていくのが自然となる。

なので、下図のとおり、SHの基本的な動きとしては、中に入ってライン間にポジショニングする、もしくは縦パスが出てこないようならFWを追い越す動きをする、というのが適切なものになるだろう。これもまさにセビージャで清武がやっていることそのものだ。

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しかしSHがFWを追い越して裏を狙おうとした場面は幾度もあったが、そこにボールが出てくるかというと、ほとんど出てこなかったというのが実際だった。 またもしボールが出てこなかったとしても、裏抜けしようとした際にUAEのDFラインが下がる。その時に生まれるUAEのDFとMF間のスペースから崩していくなど、SHの裏抜けの動きを有効活用できれば良かったが、活かせている場面は少なかったように思う。大島はまだ活用しようとしていたが、特に長谷部にはそのスペースを使おうとする意識が欠如しており、攻撃を停滞させていた。

したがってSHにしてみれば、俺たち裏に抜ける動きしたって意味ないじゃん!となり、結果ライン間で待ち構えることが多くなる清武と本田。
またSBが高い位置で横幅をちゃんととれていなっかたり活用できていないことがあった。SHが横幅をとるの?とらないの?というあたりの共通認識がチームで共有されてなかったのかもしれず、酒井コンビには迷いがあったのかもしれない。また特に酒井宏の飛び出そうとする動き出しが早すぎて、出し手と呼吸が合っていない場面もよく見られた。

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従って上図の通り、裏抜けの動きがなくなって深さのスペースがなくなる。横幅を適切にとれないことで幅のスペースがなくなる。そんな縦横にスペースのない中、中央に日本のFWとMFが密集する。であれば当然UAEも中央に密集して守ればいい。 これで見事、中央渋滞の完成だ。

 4.なぜ香川は空気になってしまったのか これによって中央でのごちゃごちゃしたプレーが増えてしまったのだが、香川が活躍しづらかった理由はそれだけではない。

そもそも香川が最も得意とするプレーとは何か。それはライン間でボールを受け、素早いターンで前を向けることだ。ライン間で前を向くプレーは、相手の守備ブロックを崩す上で非常に有効なプレーなのは言うまでもない。
UAEは日本のスカウティングをし、香川のライン間で受けるプレーをかなり警戒し、対策を企ててきていた。それを具体的に見ていく。

まず日本のCBがボールを持った時のUAEの守備陣系が下図となる。

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通常の4-4-2ゾーンディフェンスとは異なり、ボールサイドとは逆のボランチが香川を消すために下がって近くにいた。 ただし逆側ボランチも香川に近づくのが間に合わない時もある。そんな時はDFライン、特にCBが香川にボールが出た瞬間に飛び出していき、香川にプレッシャーをかけてボール奪取を狙っていた。特に19番のCBのガリブという選手は強かった。 このことが表すように、UAEのDFラインは前への守備の意識が非常に強かった。それだけに日本としては裏をもっと狙いたかったのは言うまでもない。

また香川が輝きづらかったのにはもう一つ理由がある。 というのも日本がサイドでボールを持った時、UAEのブロックはボールサイドにかなりスライドさせていた。

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これが左サイドで酒井高や長谷部などがボールを持った時のUAEの守備ブロックのイメージだ。実際にはこの図よりも全体的にボールサイドに寄っていた時もあっただろう。特にボールサイドのSHと両ボランチの計3人はかなり近い位置におり、ライン間にいる清武や香川へのパスコースを消していた。その分、本田のポジションにスペースがあり、酒井宏のポジションにはかなり広大なスペースができていた。実際、本田が大きく手を広げてここスペース空いてるぞ!と主張していた場面も見られた。これについても同様に、本田のスペースを活用する意図が見えたのは長谷部より大島だった。この本田のスペースに香川、大島のポジションに長谷部がいた時もあったが、受けようとする香川に対し、なぜか長谷部はボールを持ち直し、左サイドに再度ボールを展開していた場面を見た時は思わず「なんでやねん」とツッコミを入れてしまった。 ちなみに日本が右サイドで持った時も、左右逆なだけで似た構図ができていた。

そんなわけで香川にとっては、執拗にマークされる上に、先ほど書いたように裏抜けしようとする選手にボールが出なかったり、味方がうまくスペースを作ったり活かしたりしてくれないため、難しい試合となってしまっただろう。それでも何度かライン間で受けた時は、味方もそれを合図として一気にスピードアップし、惜しい場面にまでいっていたのはさすがの香川だった。

 5.カウンターにしてやられるジャパン さてさて、基本的にカウンター狙いのUAEに対して、日本が不用意にボールを失うプレーをし、失点する。大島のパスミスも確かに良くなかったが、それよりもその直前に本田がボールをキープした際に大島が大外に移動して横幅を確保しなかったことが悔やまれる。その結果、幅が狭いために相手に2度追いさせて奪われてしまい、カウンターされる結果となった。パススピードの問題は簡単に解決するだろうから私は特に気にしてはいない。 ちなみに失点のFKの場面では、西川は相手より先に動かずに、両手で止めようとせずに片手で手を伸ばしていれば止められたはずだった。このあたり、フットボールネーション9巻を読んでる人にはわかる話だろう。

2失点目は、長谷部の自陣でやってはいけないありえないパスミスから。オマルがサイドに流れた時に3人もマークはいらないので酒井と香川のどちらかが15番のケアに残ってほしいところでもあった。また大島は相手に触れてるか否かにかかわらず、足だけを出してしまったのは審判に印象が悪かっただろう。

ちなみにUAEのFWに吉田森重はけっこう苦戦していた。シンプルなカウンターだったり、ロングフィードでのカウンターが多かったが、吉田と森重はスピードがあるタイプではないし大変だったろう。 また特に前半だが、ボランチの2枚がどちらも高すぎる位置にいたことが気になった。つまりカウンターされると危うい感じで、時々大島が気を利かせて後ろに下がっていたように思う。しかし攻撃性能を考えれば、長谷部の方が下がり目でネガティブトランジション時のカウンター対策のポジショニングをとっていても良かった気がした。

後半、日本はサイドからの攻勢を強めていくが、サイドからのセンタリング時にゴール前に集結した選手の形が微妙なことが割とあった。ニア、ファー、バイタルの三角形(+ゴール前のダイヤモンド型)を作るというセオリーをもっと実行してほしかった。例えばセビージャなんかはそのあたりを徹底している。

その後、選手交代していくも、審判にも見放され、得点ならず。アジア最終予選の初戦を負けで終えた。

 6.余談 チームとしての共通認識を再度確認し、しっかりと統一する必要があるだろう。しかし10試合のうちの1試合が終わっただけで、まだまだ予選はこれからだ。テレビ朝日がやたらと初戦に負けた時のデータを使って煽りまくっているが、全くもって気にする必要はなく、これから改善していけばいい。というかするしかないのだけど。

今後中央のスペースを消してこようとする相手には、横幅をしっかりと確保し、裏抜けで深さもとる。さらにSBとCBの間に侵入してSBだけでなくCBをサイドにつりだすことで、中央の相手守備ブロックの人数を削り、中央にスペースを創出してチャンスを作る。そんな風に中央渋滞を解消し、サイドを警戒してきたら中央でも崩していく、という形が見たい。

大島僚太は失点に絡んでしまったものの、やはり基本技術は高く、守備でも頑張っている場面は見られた。しかし意思疎通がまだまだうまくいっておらず、判断ミス(と緊張と疲れ)があったので、今後連携もとれていくことで改善していくと期待したい。

あと、CBがビルドアップに貢献できていなかった。例えば楔のパスもほとんどなかったし、相手を引きつけて運ぶドリブルを行うことで味方に時間とスペースを与えるようなことは非常に少なかったように感じる。後者は森重が少しやっていたくらいだろうか。マンチェスターシティに移籍したジョンストーンズに帰化してもらいたくなった。

明日はタイ代表との試合。必ず勝ってみんな気持ち良くリーグ戦に戻ってもらいたい。



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